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大阪家庭裁判所 昭和29年(家イ)1256号 審判

申立人 信時美子(仮名)

相手方 信時明雄(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

申立人と相手方との長女順子の親権者を申立人と定め申立人において監護すること。

相手方は申立人に対し長女順子の扶養料として昭和三十年一月末日から同人が義務教育を終了するに至るまで、毎月末日金三千円宛を送金支払うこと。

本件申立に関する費用は各自弁とする。

理由

相手方の戸籍謄本の記載と申立人及び相手方本人審問の結果によると、申立人と相手方とは昭和二十三年○月○○日婚姻しその間に長女順子と長男正男とをもうけたのであるが、相手方は昭和二十六年頃から元の勤め先の同僚であつた田原時子と関係を結び同人と同棲して○○商を営むようになり、申立人及び相手方との間円満を欠くに至り、申立人及びその子女の扶養をも怠るに至つたので、申立人はついに同年中実方に帰り爾後引き続き実方で生活をしていたのであるが、昭和二十八年○月長男正男が事故により死亡したので、それ以後申立人は長女順子を自己の許に引き取り養育していること。申立人は現在○○店に勤務していて一万円前後の收入を得ていること、申立人は上記のような事情であるので相手方と離婚を求め、長女順子の親権者となり自己の許において養育してゆきたい希望を有し、そのため同人の養育のため同人が義務教育終了に至るまで毎月三千円の支払を求めていること。相手方も十分その責任を感じその申出に異存のないことを認めることができる。しかして相手方の当裁判所書記官に対する昭和二十九年十一月十七日付の書面によるとその事業整理の関係で当裁判所に出頭することができない事情にあり、調停委員会において調停を成立せしめることができないのであるが、上記認定の諸事情によると、申立人と相手方とは離婚し、その長女順子の親権者を母である申立人と定めて母である申立人に養育せしめ、相手方から申立人に対しその扶養料として昭和三十年一月三十一日からその義務教育終了に至るまで毎月末日金三千円宛の金員を支払わしめるのが相当であると認められるので、主文のとおり審判する。

(家事審判官 加納実)

参照

事件の実情

申立人は相手方の求婚の熱意にほだされ昭和二十三年○月○○日挙式婚姻し、満三ヶ年間同棲長女長男を挙げた。(長女順子満五歳、長男正男死亡)

申立人は相手方両親の家業たる農業を馴れぬ身に一心に手伝いひたすら両親に仕え、相手方を助け円満な夫婦生活を営みしに長女の産後実家に帰りたる留守中相手方は賭事に熱中し、あまつさえ年長の未亡人某女と情交関係を持ち未亡人宅に入り込み申立人と長女とを扶養せず家をあける事半月、一ヶ月と度重なり、ために申立人は義父母とは元来別居生活なるに生活費も義父母より受け幼児二人をかゝえて不安に堪えず、相手方に反省を求め妻子の許え帰るよう懇請したるに聞入れず妻子を顧ざる事半ヶ年に及びために申立人は幼児を連れて実家に帰りたるに何ら反省の色もなく一銭の仕送りせざるのみか依然として未亡人との不倫関係を清算せず、未亡人の前夫の子○人と未亡人とを扶養、申立人及び二人の幼児を放棄するの行為に及びしため離婚を決意し二人の幼児を義父母に頼み実家で過す中長男正男を相手方不注意により昭和二十八年○月○日水死させたる為申立人は長女を手許に連れ戻り今日迄一年八ヶ月懸命に養育せるにその間も何ら相手方は仕送りせず、夫として親としての扶養の義務も果さず申立人に与えたる物神両面の打撃甚だしく、遂に申立人は斯かる男性と一生を倶にすることは到底将来を期し難く長女も申立人と起居を共にし相手方と離別を希望するので相手方に再三離婚を求むるも何等返事なく依然として扶養せざる別居生活が続き協議が整わないので申立趣旨記載の如く調停を求める。

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